「防災は社会を明るくする!」
 ”災害”は、生活の全てに影響を及ぼします。
 ”防災”は、それらの影響を防ぎ、軽減するために行う営みです。
 つまり、”防災”は、生活の全てに対して行います。
 発想を変えれば、”防災”は生活の全てを豊かに、そして、明るくするチャンスを持っているということです。

2018年2月21日水曜日

【マンション防災】フォレストレイクひばりが丘での講演とワークショップ(報告)



広大な敷地の中に、たくさんの木々や池などの自然が溢れ、全14棟、381戸で構成されている「フォレストレイクひばりが丘」。西東京市内で、先駆的な防災活動を展開しているマンションです。

一昨年から本格的にマニュアル作成をはじめ、昨年には管理組合(理事会)と自治会とが合同で「防災委員会」を立ち上げました。

私も、マニュアル作成のコンサルティング業務を引き受けさせていただき、助言をしてまいりましたが、核となるメンバーの皆さんの熱心さに圧倒されたのを今でも覚えています。

そして、昨年11月には、マンション全体の防災訓練に合わせて、災害時における最大の困りごと「トイレ」に関する講演をさせていただきました。

この度、再度御依頼をいただきまして、2月17日(土)に住民向けの防災講演会と、防災委員会向けのワークショップを行いましたので、その様子をお知らせいたします。


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前半の講演では、過去の災害において、マンションがどんな被害を受けたのかについて、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震を比較しながらお話しました。






特に、トイレの排水問題と水の給水問題については、住民の皆さんが前のめりになりながら聴いてくださった様子が印象的でした。


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引き続いて、後半には私が開発中の『集合住宅災害対策本部運営ゲーム』の試作版を体験していただきました。






全部で40枚のカードそれぞれに、マンションで災害時によく起こり得る出来事を記載してあります。一定時間おきに次のカードをめくり、一つ一つの出来事に対応していくゲームです。

安否確認シートを傍らに置きながら実施するのですが、安否確認シートには「初級編用」、「中級編用」、「上級編用」の3種類があり、それぞれ把握できている住民の情報が異なります。

ですので、子供が二人だけで家にいる時に災害に遭ったある家族は、上級編になると、父親が消防官、母親が市役所職員という設定が出てくるので、しばらく帰ってくる見込みがないことが発覚するのです。

このように、何度も何度も、レベルアップさせながら実施していくことで、さらに深みを増すことができるような仕組みを取り入れてみました。

マンションで起こる主な出来事をほぼ網羅させているため、ゲームをしながら話し合っていくことで、自然とマニュアルの基盤となるような話し合いもできるため、マニュアルができていないマンションでも、マニュアルはできたけれども、それが実践に繋がるのかを検証したいマンションでも使うことができます。






試作版初デビューだったため、うまくいくか不安だったのですが、「これ売るの?売るんだったら買う!」なんていうお声もいただき、十分実践で使えるツールとして完成できていることを実感させてもらいました。

今回は2グループに分かれ、5~6人ずつ体験してもらいましたが、自然と安否確認をまとめる人、火災や建物被害に対応する人、マンション中に排水をしないように呼び掛ける人などの役割分担をしていました。

また、終了後もこちらの進行をする前から、色々と分析を始めており、このツールは意識が上がるとともに、実践にも十分繋げていけると確信しております。









さらに、終了後に中級編用、上級編用の安否確認シートも見ていただきましたが、「このゲームを棟ごとに全住民が実施することで、普段は個人情報の開示に否定的な方も、必要性を理解してくれるのではないか」という発言もありました。

地道に広報をしていてもなかなか伝わらなかったり、訓練をしても参加者が少なかったり、名簿を作成しようとしても個人情報の開示を拒否されてしまったりと、既存の方法ではどの取り組みも大きな前進には程遠いというのが、マンションで防災を担う方々の大きな悩みだと感じています。

しかし、このゲームを体験することで、自然と広報するキッカケにもなるし、一種の訓練になるし、次は訓練を通してやってみたくもなるし、必要最低限の個人情報収集に前向きになるし、一石二鳥どころか、一石三鳥、一石四鳥の効果を発揮すると思いました。


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フォレストレイクひばりが丘さんは市内でもかなり進んだ取り組みを実践されており、このまま軌道に乗っていけば、災害時の実働はほぼ問題なくできると確信しています。

私はこのマンションが「防災モデルマンション」になるべき力を持っていると思います。そうなるよう、これからも支援していくとともに、全国のマンションにおける防災がさらに推進されるよう、開発中のツールを本格的に展開していきます。

ジョージ防災研究所 代表
防災アドバイザー 小野 修平

2018年2月19日月曜日

【取組報告】西東京市立柳沢中学校の防災教育②(HUG体験)



西東京市立柳沢中学校では、生徒への防災教育を熱心に行っております。
第1学年が1月31日の防災講話を踏まえて実施した、避難所運営を体験するゲーム「HUG」を見学・支援させていただきましたので、御報告いたします。

(★防災講話の模様は、こちら からご覧ください!!)

HUG(ハグ・避難所運営ゲーム)とは静岡県で開発されたゲームで、一人一人の避難者が1枚ずつのカードになっており、そのカードにはそれぞれの困りごとなどの情報が書かれています。それが次々へと読み上げられる(=避難してくる)ので、プレイヤーはそれを学校の図面上でどこに入ってもらうかを考えつつ、困りごとに対して対応をしていくゲームです。

このHUG体験を行うにあたり、昨年は私がグルグルと15班を回って、必要なタイミングで必要な問いかけを行いましたが、その存在を各班に固定で付けた方がいいということで、今回は「アドバイザリースタッフ」の導入をしていただけました。

直前に実施している防災講話の後に、集まれるメンバーでHUGを体験するとともに、必要な視点(=教えるのではなく、問いかける)を共有しました。






いよいよ、HUG本番の開始です。
今回のメイン講師である「田無スマイル大学」の富沢このみさんから説明とゲームの想定を提示された後、1組目の家族のカードが読まれました。






45分の間で、たくさんのカードが配られる中、8つの出来事も交えつつ、どの生徒も一生懸命取り組みました。






その後、各班ごとに振り返りシートを用いつつ、ゲームの振り返りをし、選ばれた6班が振り返りシートの発表を行いました。

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今回、2年目の取り組みとして、防災講話とHUGの支援をさせていただきましたが、避難してくる方々が抱える状況や課題に対して、とてもマイナスイメージの発言が多かった印象を受けました。

大人は機械的にカードを配置して終わり、という場合があるんですが、中学生は一人一人の避難者に丁寧な対応をしようと努力します。

しかし、昨年は「うつ病」を「うつる病」と捉えていた生徒もいたり、車椅子をステージ上に上げてしまったりといった行動が見られました。

そこで、様々な機会での教育や今回のアドバイザリースタッフの導入に繋がったわけですが、今回は「やばい人がきた!」という発言が目立っていたように感じます。

去年以上に、災害時に孤立しがちな方々の話に力を入れたつもりでしたが、その成果からか丁寧な対応が見られた一方、「かわいそうな人」「大変な人」「助けてあげなければならない人」という捉え方が多かったように思います。

実は、出来事の一つに「赤ちゃんが泣いて困っている人がいます」というものを急遽足してもらっていたのですが、外にテントを立てたりなど、どこかに追いやり、孤立させる対応が多かったように思います。

中にはキッズスペースを作るといった対応のように、同じ悩みを抱える方々を集め、安心できる居場所づくりを考えた班もありましたが、多くの班が「赤ちゃんの泣き声=迷惑」と捉えているかもしれない気がしました。

赤ちゃんは泣くものですし、それを迷惑だからテントに…なんて対応をしてしまえば、孤立させてしまいます。

よく、災害時で大変なんだから、とりあえず受け入れるだけ受け入れて、あとで一人一人に対応していけばいい、なんていう話が聞かれますが、それでは赤ちゃんを抱えている家族は、2時間もすれば迷惑を掛けると言って、避難所から出て行きます。そして、地域から孤立していきます。

対応に正解はないですが、ベストはあるはずです。

この経験を生かして、来年度の防災講話は具体的なエピソードを用いながら落とし込んでいかないといけないのかな、と思いました。


ですが、全体的には中学生一人一人が主体的に学び、考え、とても充実した学習になったと感じます。

引き続きお手伝いさせていただくわけですが、今後も柳沢中学校の取り組みを見守っていきたいと思います。

ジョージ防災研究所 防災アドバイザー 小野修平

【講演報告】西東京市立柳沢中学校の防災教育①(防災講話)



本日は継続的に関わらせていただいております、西東京市立柳沢中学校における取り組みについて御報告いたします。

柳沢中学校は、生徒への防災教育を先進的に取り組んでいる学校です。

1年生の段階では、私の防災講話と避難所運営を体験するゲーム「HUG(避難所運営ゲーム)」の体験を行います。

2年生になると、生徒自身が避難者になりつつ、避難所運営協議会(※1)が避難者を受け入れる避難所開設訓練を実施します。

これをベースにしながら、障害の理解を進める教育のため、視覚障害者をお呼びしたり、近隣の福祉施設の協力の下で車椅子体験をしたり、地域包括支援センターによる認知症サポーター養成講座を実施したりしています。






ということで、今年も1月31日(水)の午後、第1学年の生徒に対して、防災講話を実施しました。

まず、地震が発生したその瞬間、どのように身を守ったら良いのかを話しました。

学校の避難訓練だけでは、学校の外に出た瞬間に命を守ることができません。
写真と映像を交えつつ、生徒にも問いかけをしながら説明しました。

続いて、過去の災害を見てみると、元気な人や困りごとを訴えられる人が多くの支援を受けていき、いわゆる「要配慮者」と呼ばれる配慮やサポートを必要とする方々が取り残されている話をしました。






講話の後半戦では、「中学生は助けられる存在ではなく、助ける存在である」というメッセージを伝え、中学生であれば困っている人のために助ける側になれる力があることを話しました。

たった50分の時間でしたが、今年もとても熱心に学ぶ姿勢を見られて嬉しかったです。

この防災講話を踏み台にして、2月5日(月)にHUG体験を実施しました。
その模様は、こちら からご覧ください!!


(※1)
避難所運営協議会とは、西東京市内の各公立小中学校に設置され、行政職員・学校教職員・地域住民等で構成されている。
平常時はマニュアルの作成や避難所開設訓練の実施などを行い、災害時には避難所の開設と避難所運営委員会への引継ぎを担う。

ジョージ防災研究所 防災アドバイザー 小野 修平