「防災は社会を明るくする!」
”災害”は、生活の全てに影響を及ぼします。
”防災”は、それらの影響を防ぎ、軽減するために行う営みです。
つまり、”防災”は、生活の全てに対して行います。
発想を変えれば、”防災”は生活の全てを豊かに、そして、明るくするチャンスを持っているということです。
2017年3月17日金曜日
【講座報告】西東京市柳沢公民館「みんなでいのちを守り、助け合うために」part.1
今回のブログでは、西東京市の柳沢公民館が主催した地域防災講座『みんなでいのちを守り、助け合うために』で講師を務めましたので、その模様をお伝えしようと思います!!
(初挑戦ですが、数ページにわたる長編のブログ記事にしてみたいと思います)
この講座は2回シリーズで実施され、1回目は3月2日(木)、2回目は3月16日(木)に行われました。
1回目は避難所の運営スタッフの一員となった設定で、避難者1人を1枚のカードに模して学校の体育館や教室の図面にカードを配置する「避難所運営ゲーム」を、2回目は西武柳沢駅周辺を防災の観点から歩いてまちを知る「防災まち歩き」を行いました。
しかし、よくある防災講座と異なるのは、単に避難所運営スタッフを養成するために「避難所運営ゲーム」をしたり、防災マップを作るために「防災まち歩き」をするのではなく、要配慮者の視点から「避難所運営ゲーム」や「防災まち歩き」を実施し、災害時に要配慮者がどのようなことに困り、どのような支援を求めているのかを知るキッカケにしてもらうことを第一の目的にしたことです。
要配慮者というのは、例えば介護が必要な高齢者や障がい者(身体・知的・精神)、妊産婦、乳幼児、外国人、女性、外国人など、水や食料、トイレなどの全員に共通する支援に加え、性別や宗教、障害の有無などの特性に応じた配慮を特に要する方々をいいます。
今回の講師は、普段から女性の視点から防災対策を実践されている、大田区立男女平等推進センター「エセナおおた」の指定管理者である“特定非営利法人男女共同参画おおた”の青木千惠さんと日向野みどりさんにも加わっていただきました。
元々の避難所運営ゲーム(HUGともいいます)は、静岡県で開発されたものですが、1回目の講座ではHUGを多様性配慮の視点から改良したものを用いました。
冒頭には、過去の災害で女性が置かれた状況を中心にお話をいただきましたが、どうしても自分のことで精一杯の中、要配慮者に対する配慮やサポートに手が回らず、結局は最も配慮が必要なはずの要配慮者が支援の網目からこぼれ落ちていってしまうんですよね。
私も、要配慮者の部分については、今年度最も力を入れている部分でもあります。
その後、早速、避難所運営ゲームを2チームに分かれて実施していただきました。
参加者の皆さんは避難所運営ゲームは初めてだったようですが、やはり苦戦された方が多かったみたいですね。
しかし、ゲームの中で戸惑いがありながらも、グループのメンバーと話し合い、一人ひとりの避難者にきちんと向き合っている姿が印象的でした。
感想の中にも、『「他人事ではない」それだけはよくわかりました』と書かれた方もいらっしゃり、何とかしなければいけない問題だと1回目の講座で気づいていただけました。
次のページでは、第2回目「防災まち歩き」の様子をお伝えします。
【講座報告】西東京市柳沢公民館「みんなでいのちを守り、助け合うために」part.2
前のページに引き続き、防災講座2回目「防災まち歩き」の模様をお伝えします。
2回目は、要配慮者の視点も踏まえながら、西武新宿線の西武柳沢駅周辺を歩きました。
実際に車椅子を使用されている方にお願いして参加していただくこともできたのですが、今回はあえて車椅子に乗ったり、押したりということも経験していただきたかったので、参加者に交代で乗ったり、押したりしてもらいました。
まずは、点字ブロックがある上を、車椅子で通行。
車椅子に乗っていた人は、「体の中にまで振動が伝わってきた」と仰っていましたが、視覚障害者にとって命綱である点字ブロックが、車椅子やベビーカーにとってはバリアになっていることもあるということですね。
次に、公衆電話ボックス。
災害時には固定電話や携帯電話よりも繋がりやすいと言われている公衆電話ですが、参加者の皆さんは車椅子で使用できるかということを確認し、結果は狭くて入れないということがわかりました。
しかし、これは災害時に限ったことではなく、普段の生活から、車椅子利用者を排除してしまっている街であるということですよね。
携帯電話の普及から公衆電話は減少の一途を辿っておりますが、災害時に安否確認などで使いたくても使えない、ということであっては困ります。
ですが、この公衆電話には災害時に役立つ緊急連絡先(警察、消防、災害用伝言ダイヤルなど)が掲示されており、4か国語(日本語、英語、中国語、韓国語)で表示があったので、日本語がわからない外国人にも比較的優しい配慮がされておりました。
それから、コンビニエンスストアの入口に、こんなステッカー(ピーポくんの家の右側)が貼ってありました。
これは「災害時帰宅支援ステーション」を表すステッカーで、コンビニエンスストアやファミリーレストラン、ガソリンスタンドなどに貼ってあります。
災害時には何らかの支援(水や食料の配布、トイレの貸し出し、場所の提供等)をしてくれるかもしれない場所です。
続いて、少し狭い路地に入ってみましたが、上を見上げてもらったところ、電柱がたくさんあり、思ったより電線も低い位置をたくさん走っており、”恐怖”を感じられた方が多くいました。また、自動販売機もたくさん設置されていました。
もし、この電柱や自動販売機が倒れて道を塞いでしまった場合、緊急車両が通れないだけでなく、自力では乗り越えられない人もたくさんいますよね。
しかし、これも参加者の中から指摘がありましたが、電柱や自動販売機にはその場所を示す住所や通し番号が掲載されているので、通報する際に一つの目印になるということです。
(私があれこれ話さなくても、参加者がそれぞれ持っている情報を提供してくれるので、とてもいい雰囲気で進行していました)
まち歩きの模様は、次のページに続きます♪
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【講座報告】西東京市柳沢公民館「みんなでいのちを守り、助け合うために」part.3
前のページに引き続き、まち歩きの模様をお伝えしていきます。
この後、踏切を渡る順路だったのですが、その手前で一旦皆さんを集めました。
そこでお話したことは、車椅子には小さな前輪が2個、大きな後輪が2個ありますが、線路との溝に前輪がはまり込んで抜け出せなくなる事故が起こりうるということです。
これももちろん、災害時に避難のサポートをする時だけでなく、普段からあり得るリスクです。ベビーカーもあり得ますよね。
と言いながらも、前輪が線路の溝にハマり、みんなで大慌て…。
ここで電車を止める羽目にならず良かったです。こういう時に焦ってはいけませんが、さすがにかなり焦りました。
次に、福祉避難施設にも指定されている「ほうやちょう保育園」の裏にある歩道と車道の段差を利用し、車椅子を扱う際の基本的な注意事項と段差の通行方法をお話しました。
別に介護職を養成する講座ではないので、本当に大事な部分だけですね。
その後、消火栓などを確認後、写真を取り損ねましたが、直線ゾーンにて、視覚障害者を誘導する際に使う「手引き」という方法をお話し、実践してもらいました。
お伝えしなければいけないことはたくさんありますが、ひとまず手引きの”基本の姿勢”ができていないと、かなり不安な気持ちを抱かせてしまうので、”基本の姿勢”の習得を中心に、恐怖感が無ければ視覚障害者役の方にはアイマスクをしてもらいました。
***
その後、公民館へ戻ってきました。
今回は時間の都合でショートカットした部分があり、そこで見てもらいたかった防災行政無線の話から。
やはり皆さんの印象としては、「普段から聞きにくい」という話でしたが、さらに緊急車両のサイレンやヘリコプターの音で全く聞こえなくなると思います。
そもそも音声による情報伝達では聴覚障害者や加齢による難聴で聞こえづらい方にとって、情報が伝わらないことになります。
そもそも、きちんと聞こえたって、聞き逃すことだってありますからね。全ての人に情報が伝わるように配慮することは大切です。
また、西東京市の避難所の種類(全部で5種類あります)を説明した後、西東京市で最も被害を大きくするものは火災だということをお伝えしました。
むしろ、津波は高いところに避難すればいいですが、火災は消すか、燃えるものが無くなるまで延焼し続けるわけなので、私は津波より火災の方が怖いと考えています。
消火器で初期消火できる限界は天井に火が達するまでと言われますが、だいたい2分30秒で天井に燃え移ります。ですから、各家庭に最低でも1本の消火器は必須です。
また、一般市民が使用できる消火設備の一つとして、「スタンドパイプ」というものもあります。これは道端にある消火栓(黄色い線で囲まれたもの)を開け、スタンドパイプを取り付けてホースを接続すれば消火に使用することができるものです。
今回の講座で共に講師をした「エセナおおた」のお二人によると、大田区では街中にスタンドパイプが備えられており、訓練も頻繁に行われているそうです。私も声を大きくして言っているのですが、なかなか西東京市には浸透せず、とても焦りを感じています。
阪神淡路大震災や先日発生した糸魚川の大火災のような光景を西東京市で見ることがないよう、できる備えはまちづくりの一環として進めたいですよね。
次のページでは、この記事をお読みの皆さんに、この防災講座を踏まえて是非伝えたいメッセージをお伝えします。
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【講座報告】西東京市柳沢公民館「みんなでいのちを守り、助け合うために」part.4
というわけで、今回は2回連続講座として、災害時に誰も取り残さないまちづくりのきっかけとなることを目指し、講座を実施しました。
しかし、残念なことに、西東京市の公民館では年々防災講座への参加者数が低くなっていることを感じるそうです。私も感じます。
公民館ではあらゆるテーマや内容で仕掛けをしていますが、東日本大震災の発生から6年、熊本地震の発生から約1年が経ち、防災意識が下がってきていることを表しているのだと思います。
その中でも、自治会活動に生かそうという参加者や、1回目の講座の後に講座で初めて知り合った人たちでランチをしたり、早速講座後に防災グッズをそろえ始めた方もいました。小さな講座であっても、その中からそういった嬉しい出来事があると遣り甲斐を感じます。
ですので、私個人としては大きなアクションを仕掛けなければと思いつつ、このように少しずつ小さな取り組みも継続していかなければと感じます。
また、残念ながら西東京市で大災害が起きれば、間違いなく要配慮者を中心に、多くの人が当たり前の支援すら受けられず、支援の網目からこぼれ落ちていくことが目に見えています。
そして、それを支援する立場の人達も疲弊し、相当大変な復旧復興を辿ることになるだろうと危機感を抱きます。
ですが、今回実施した避難所運営ゲームやまち歩きというのは、必ず防災意識を向上させるためのキッカケの一つになると信じています。それは、この講座をやりながら、改めて実感しました。
今後も地道ではありますが、西東京市を中心にこういった取り組みをあちこちの地域で仕掛け、一人でも多くの人に防災へ関心を持ってもらい、防災の担い手を増やしていかなければと思います。
ぜひ、5人とか10人とかでもいいので、「うちの地域で防災に関心を持たせるきっかけづくりをやりたい!」という方がいらっしゃったらお手伝いしますので、お気軽にお声掛けいただければと思います。
私も頑張ります!!
ジョージ防災研究所 代表 小野修平
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