「防災は社会を明るくする!」
 ”災害”は、生活の全てに影響を及ぼします。
 ”防災”は、それらの影響を防ぎ、軽減するために行う営みです。
 つまり、”防災”は、生活の全てに対して行います。
 発想を変えれば、”防災”は生活の全てを豊かに、そして、明るくするチャンスを持っているということです。

2018年7月2日月曜日

【報告】西東京市立青嵐中学校(HUG実施支援)



今回の報告は、中学生に対する防災教育についてです。


5月12日(土)、西東京市立青嵐中学校の2年生が、避難所運営において避難者の受け入れを疑似体験するシミュレーションゲーム「HUG(避難所運営ゲーム)」を体験しました。


これは、田無スマイル大学さん(リンク有)が3年前から青嵐中において実施しているもので、毎度コラボをさせていただいております西東京レスキューバードさん(リンク有)とともに、HUGの実施をサポートさせていただきました。


同じような取り組みは、市内の柳沢中学校でも行っており、過去のブログ記事は下記のリンクからご覧ください!
[平成28年度]
『【講演報告】西東京市立柳沢中学校「第1学年防災講話」(中学生向け防災教育)』(H29.2.7)
『西東京市立柳沢中学校のHUG体験を見学しました!』(H29.2.17)
[平成29年度]
『【講演報告】西東京市立柳沢中学校の防災教育①(防災講話)』(H30.1.31)
『【取組報告】西東京市立柳沢中学校の防災教育②(HUG体験)』(H30.2.5)






HUGとは、それぞれのカードに避難者の様々な情報が書かれており、カード1枚の大きさが体育館や教室における1人分の面積となっていて、読まれたカード(避難してきた人)を図面上で空いているところへ御案内しながら、時々発生する出来事(イベント)にも対応していくゲームです。


私は柳沢中学校と同様、全グループを回りながら、カードの配置の仕方や出来事に対する対応などを見て、それをまとめていきました。これを休憩時間に進行役に伝え、発表やまとめの参考としています。


中学生のHUGでは、「教える」ではなく、「考えさせる」「気づかせる」ということを重視しており、各グループに配置されたスタッフが、考えたり、気づかせるための問いかけを適宜行っております。


ほとんどのグループでは、「避難者の人数を報告してください」という出来事が起こったあと、すぐに自分達で名簿や受付の必要性に気づいたり、スタッフの問いかけで気付くのですが、中には序盤から名簿や受付の重要性に気付くグループもあり、正直驚かされました。






しかし、実際の場面において、西東京市には発災初期に避難所の開設のリーダーを担う「避難所運営協議会」が設置されておりますし、HUG自体は避難所開設・運営のうち、ごく一部の部分でしかない上、実際の避難所運営協議会の取り組みと乖離していたり、過去の災害では特に配慮が必要な方々(=要配慮者)こそが避難所に行かない、行けない、存在が把握されていない、といった問題が起きていました。


そもそも、中学生にHUGをやる一番の目的は、HUGを通して、防災に対する意識や関心を高め、自分達にもできることを考えたり、配慮やサポートが必要な方々への対応のしかたなどを学ぶことだと考えています。


HUGはそういった教育の観点から考えると、とてもいい教材であり、”正しく”使うことができれば、防災教育に留まらず、最高の教育ツールになると考えています。


青嵐中学校さんには今年初めて関わらせていただきましたが、その点について学校側と認識を共有でき、来年度以降の取り組みについて意見交換ができたことは大きな一歩だと思っています。






今月は3年目の取り組みとなる柳沢中学校さんの取り組みに関わります。また、中学校では、9月に市内の保谷中学校さんにもお声がけいただいております。


これだけの災害大国なのにも関わらず、今現在、防災教育の体系的な整備が追い付いていない現状があります。


引き続き、子供への防災教育の発展に関わりつつ、実践を重ねながら、防災教育の体系化に全力を尽くしてまいりたいと思います。


平成30年7月2日

ジョージ防災研究所 代表 防災アドバイザー 小野修平
TEL:042-452-3193
FAX:042-452-3194
Mail:jyoji.bousai.labo@gmail.com



2018年6月28日木曜日

【大阪北部地震】緊急提言②・要配慮者の安否確認



こんにちは。
6月18日に発生した大阪北部地震を踏まえ、『危険なのは、ブロック塀だけではない!』というタイトルでブログを書きましたが、本日は第二弾です。


本日は、要配慮者の安否確認についてです。


要配慮者とは、災害時に特に配慮を要する方々のことで、高齢者や障害者、妊産婦や乳幼児、外国人などの方々が位置付けられています。


どうしても、一律な対応だけでは、様々な支援の網目からこぼれ落ちてしまうため、法律にも定義付けて対策を進めているのですが、残念ながら、過去の災害では、要配慮者こそが地域から孤立し、大変な思いをされる実態を繰り返してしまっているのです。


新聞報道によると、今回の大阪北部地震においても、要配慮者のうち、要介護度の高い高齢者や重度障害者の安否確認に大きな問題があったとされています。


災害対策基本法第49条の10では、要配慮者のうち、自力で避難行動をするのが難しい方々(=避難行動要支援者)について、各市区町村で名簿を整備することが義務付けられています。


そして、大阪の地震において、被災13市町のうち、


①名簿を基に安否確認をした:8市町
(大阪市、豊中市、守口市、茨木市、寝屋川市、四條畷市、交野市、島本町)
②名簿は使わず障害福祉事業所への連絡や独自の独居高齢者名簿などで安否を確認:2市
(高槻市、摂津市)
③安否確認すら実施せず:3市
吹田市、枚方市、箕面市)


という実態であったのに加え、数日かけても安否確認が終わっていない自治体が多くあります。


そもそもですが・・・


もう一度確認をしておくと、避難行動要支援者名簿というのは自力で避難行動するのが難しい方のリストです。


5名の方がこの地震で亡くなられていますが、5人目の方は自宅において、本やCDなどの下敷きになりながら亡くなっていたところを少し時間が経ってから発見されました。


一刻を争う避難=津波のみ、というイメージを持たれている方が多いのも事実なのですが、①火災の延焼、②家屋や家具の下敷き、③ガラスなどによる怪我、が起きているような状況で、数時間、数日とそのままにされてしまえば、助かる命が救えなくなってしまいます。


ですので、津波でなくとも、大地震発生時は速やかな安否確認が必要なんです。


そもそも、多くの自治体が、高齢者で言うと要介護度3以上とか、障害者手帳で言うと1級・2級程度というように、重度の方々だけを名簿化しているケースが多いのが現状です。


しかし、重度の方ほど、施設に入所されていたり、在宅で多くの福祉サービスを使っており、わざわざ名簿を整備しなくても、福祉や医療の関係者や民生委員さんなどは特に気にしているケースがほとんどでしょう。


改善策はまた別の機会で詳しく扱うことにしますが、現状の避難行動要支援者名簿の制度では、救えるはずの命が救えない可能性があまりにも高く、危機感を感じています。


ご縁あって、地元ではこの問題に関する改善に関わり始めたので、専門家の立場からきちんと提言していきたいと考えておりますが、全国的な改善がなされていくことを切に願っております。


(参考文献)
朝日新聞『「要支援者」名簿使用、8市町のみ 安否確認、3市は行わず 大阪北部地震』(平成30年6月22日)


平成30年6月28日

ジョージ防災研究所 代表 防災アドバイザー 小野修平
TEL:042-452-3193
FAX:042-452-3194
Mail:jyoji.bousai.labo@gmail.com

2018年6月25日月曜日

【報告】ふれあい碧「西東京市で起こる災害に備えよう!」



4月27日(金)に開催した地域住民向け防災講演会の様子を御報告いたします。


今回お伺いしたのは、西東京市の各小学校通学区域ごとにある、ふれあいのまちづくり住民懇談会(通称:ふれまち)の一つ、「ふれあい碧」(碧山小学校の通学区域)さんです。


毎月、様々な取り組みをされておりますが、今回は50名近くの住民さんが集まってくださり、『西東京市で起こる災害に備えよう!~誰も取り残されないために~』というテーマで防災講演会をいたしました!!






前半は、家庭での備えとして、トイレ編のお話をしましたが、この話が大好評で、「トイレは盲点だった」との感想がたくさんありました。


残念ながら、トイレの備えを行っている住民さんはかなり少なく、されている方々も2~3日程度で、到底、大規模災害時、ライフラインが止まった環境下を乗り越えることはできません。


今回もいつもの如く、格安で誰でもできるトイレ防災対策を伝授したところ、多くの方に共感をいただきました。






続いて、西東京市で大地震が起きたら…ということで、どのような被害が出るのかという話について、テーマ別にお話しました。


安易に考えていた方もいた方もいらっしゃったようですが、西東京市にも大きな地震が来る可能性があることを伝えたところ、驚かれていた方も多くいたのが印象的でした。






そして、最後に、災害時に取り残される傾向にある要配慮者の問題を取り上げました。


西東京市の各小学校の通学区域において、ふれあいのまちづくり事業が行われていることで、その繋がりが必ず、災害時に助け合いをする基盤の一つになると思います。


実態を伝えるとともに、必要な視点もお伝えし、今回の講座を締めくくりました。1時間にわたり、笑いもありながら、熱心に聞いてくださった皆様、お疲れ様でした。






この講座後、クラリネットの演奏を皆さんで聴き、真面目な時間のあとに、私も一緒に、とても楽しいひと時を過ごさせていただきました♪


平成30年6月25日

ジョージ防災研究所 代表 防災アドバイザー 小野修平
TEL:042-452-3193
FAX:042-452-3194
Mail:jyoji.bousai.labo@gmail.com

2018年6月22日金曜日

【大阪北部地震】緊急提言①・危険なのは、ブロック塀だけではない!



6月18日、月曜日の7時58分、
まさに通勤・通学時間帯に発生した大阪北部での地震。


まずは、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。


災害医療の世界では、3~4日目を超えると、内因性の疾患が増えてくると言われています。しっかりと食事や水分を摂り、トイレは我慢せず、ストレスは抱えないようにしていただき、時には弱音を吐きながら、決して無理はしすぎないでいただければと思います。


さて、地震発生当初から、様々な情報が飛び交い、何か情報発信をしても、埋もれてしまう可能性もあることから、必要な情報はあちこちで出されていましたので、3日間は沈黙を貫いてきましたが、この地震を受けて、いくつか全国に発信しなければならないと感じることがあるので、一つずつ整理をしながら、書いていきたいと思います。


まずは、まだ9歳の小学校4年生の女の子が、通学途中にブロック塀の下敷きになって、亡くなってしまったという悲しい事故について。


1.不適切な事前対策

この事故については、各種報道でも言われているとおり、現在の建築基準法上、違法だったとのことですので、これをそのままにしておいたことは、大問題です。


さらに、平成27年11月に、防災アドバイザーがこの学校で講演を行った際、講師は講演前に学校周辺も見て回り、ブロック塀の危険性を指摘したとのことです。


それを、学校長が教育委員会に連絡をしたのにも関わらず、コンクリートの専門家ではない職員が、劣化具合だけを棒で叩いて確認したのみ、との報道があります。


この防災アドバイザーの方は、この後もブロック塀のことが気になり、学校にメールをしたとのことですが、その後に適切な対策が講じられていれば、今回の悲惨な事故は起きていなかったかもしれません。


私も、学校や保育園など、子供達が通ってくる場所で講演をさせていただく際には、必ず、建物内だけでなく、早めに学校へ到着し、周辺を見て回るようにしています。


そして、気になった部分は、関係者の方々に伝えるようにしていますが、今までに指摘させていただいた部分が改善されているのかの確認までは出来ていないので、今回の事故を受け、確認をしなければならないと思っています。


2.街中の危険はブロック塀だけではない

この事故を受け、国は早々に対応に乗り出し、菅官房長官は、文部科学省に対し、全国の通学路の安全を確認するよう指示をしました。


そこで、早速全国の自治体では、通学路を行政職員が歩いて回り、中には危険なブロック塀を発見し、すぐに立ち入り禁止にした上で、撤去に動いたところの報道が次々へと出てきます。


しかし、実はブロック塀が地震で倒壊して死者が出たのは、今回が初めてではありません。


私が把握できた限りでも、1978年の宮城県沖地震、2005年の福岡沖地震、2018年の熊本地震など、これまでの災害でブロック塀の倒壊による多くの犠牲を出してきました。


今回、全国規模で一斉に点検に乗り出したことは大きな一歩ですが、何故これまでにやって来なかったのでしょう。


そして、それ以上に懸念していることは、街中の危険はブロック塀だけではない、ということです。


街中を歩いていると、家屋やビルなどの建物が倒壊してくることもありますし、電柱や電線、ガラス、看板、エアコンの室外機、屋根瓦、壁材、植木鉢、自動販売機、灯篭などなど、街中を見回せば、地震で倒れてくるもの、落ちてくるもの、移動してくるものがたくさんありますよね。


まずはブロック塀の危険だけでも排除されていけば、大きな一歩なのは確かなのですが、それ以外の危険に関しても見ておかなければ、同じ過ちを今後の災害で起こすことになります。


私個人としても、繋がりのある関係先にはブロック塀以外の危険についても提言をしてまいりたいと思いますが、今現在、緊急措置として行われているブロック塀の点検と併せて、他の部分で気になった部分については、対策を検討していただきたいと思います。


3.防災教育の充実の必要性

とはいえ、室内にせよ、屋外にせよ、危険を全て排除することは不可能です。


ですから、平常時になるべく危険を排除すると同時に、どういった危険があり、どのように身を守ったら助かる可能性が上がるのかを正しく理解しておくことが必要です。


しかし、その辺りまで子供に伝えている家庭はそれほど多くないのが実情ですし、学校においても、学校内での身の守り方が中心となってしまい、家庭や地域で発生した地震への対応の指導までは行われていない学校がほとんどでしょう。


私も、様々な学校での防災教育の実践をさせていただいており、家庭や地域における身の守り方も指導してきましたが、その重要性を改めて認識しました。


そもそも、1日のうちで子供が学校で過ごす時間は7~10時間程度ですし、土日祝日や長期休みも入れてしまえば、子供達が学校で過ごす時間の方が圧倒的に少ないのです。


いつも近くに大人がいるとは限りませんし、その大人だって適切な対応が取れない可能性もあります。


とはいえ、現状では学校は様々な教育を行わなければならず、命に関わる教育ができないのが実情です。


そこで、私などの人材にお声掛けいただき、代わりに防災教育をするような学校が多くあると思いますが、このような体制を続けていれば、根本的な解決にならないと思います。


私は、全ての学校で、系統的な防災教育が行われるべきですし、それができるように、教員養成課程や教職員研修での充実も、もっと図られるべきだと感じます。
(ちなみに、教員養成課程においては、災害を含む全ての学校安全について、2019年度から必修化になる予定です)


悲惨な事故が起きてから動き出すのでは遅いのですが、これをきっかけに、全国の防災教育が充実していくことを切に願うと同時に、私も気を引き締め直し、この仕事に臨みたいと思います。


平成30年6月22日

ジョージ防災研究所 代表 防災アドバイザー 小野修平
TEL:042-452-3193
FAX:042-452-3194
Mail:jyoji.bousai.labo@gmail.com

2018年6月21日木曜日

【報告】理研テクノプラント株式会社(社員研修)



ブログでの報告をだいぶ怠ってしまいましたが…
4月26日に企業様の社員研修を行いましたので、その模様を御紹介したいと思います。


今回お邪魔したのは、理研テクノプラント株式会社さん。
店舗や一般ビル、工場の電気・内装工事の企画・設計及び施工を行う企業さんです。
(http://www.rik-tp.co.jp/)


これまで会社として防災にはあまり力を入れられていなかったということで、今後はマニュアルづくりや備蓄をやっていくための導入となるような研修を行いたいとのことで、御依頼いただきました。


テーマは、「大規模地震発生時の初動対応を学ぶ」とし、まずは、災害が発生したその瞬間の初動対応として、ごくごく基本的な部分を話しながら、過去の災害で得られた教訓や、会社のある東久留米市で起こり得る被害などをお話しました。






社員は11名で、とてもアットホームな雰囲気のある会社ですが、社員さん個人の防災対策も大方不足気味。


そこで、まずは個人として必要な備えの方向性を提示していきつつ、会社としても何が必要なのかを考えていただく内容としました。


引き続き、マニュアルづくりやどんなものを備蓄したら良いかといったアドバイスをしてほしいということですので、今後も支援していきたいと思います。


ジョージ防災研究所代表 防災アドバイザー 小野修平


2018年4月5日木曜日

【報告】中学生と一緒にまち歩き~みんなで災害に強いまちをつくる~



東日本大震災の発生から7年が経過した、2018年3月11日。

西東京市の柳沢公民館と柳沢中学校の共催、新町地域包括支援センターと民生児童委員の全面協力のもと、西東京市柳沢・新町地域で防災講座を行いましたので、その模様をお伝えしたいと思います。

***

まずは、当日の様子です。

10時から15時という長丁場の講座でしたが、講座自体に中学生8名を含む31名、後ほどお伝えする昼食炊き出しボランティアに中学生5名を含む14名の市民や関係者が参加しました。

講座本編の午前中は、4グループに分かれて、柳沢・新町地域のまち歩きを行いました。まずは出発前に、配布した地図に、今回歩くコース付近にある避難所を確認しました。

実はこの地域は、旧保谷市と旧田無市の市境だったことや高校、大学も存在することから、近隣に5校が密集(市立保谷第二小学校、市立柳沢小学校、市立柳沢中学校、都立田無工業高校、武蔵野大学)している特殊な地域だと言えます。







そして、いよいよ防災まち歩きのスタートです。

一般的な防災まち歩きというと、電柱やブロック塀、エアコンの室外機などの「災害時に危険なもの」と消火栓や井戸、AEDなどの「災害時に役立つもの」を発見し、それを地図に書き込むことが多いかと思われます。

しかし、この講座は地域の共助の力を育むものですから、一般的な防災まち歩きの要素に加え、孤立し、様々な支援の網目からこぼれ落ちやすい「要配慮者」の視点を組み入れたいと考えました。

「要配慮者」とは、全ての人が災害時に何らかのことで困りごとを抱える中、命やその後の生活において、特に配慮を必要とする方々のことを指し、主に要介護高齢者や障害者、妊産婦や乳幼児、外国人などの方々が例として挙げられます。

今回の講座では、各グループに1台ずつ車椅子を渡し、順番に乗ったり、押したりしながら、まち歩きのコースを歩いていただきました。






また、人通りの少ない道では、2人1組になってもらい、片方がアイマスクをして、視覚障害の方の誘導をする際の「てびき」の「基本の姿勢」というものを身に付けていただきました。






車椅子に乗った方は、「最初は怖かった」、「予想以上にガタガタ揺れる」といった感想を言っていました。

また、車椅子を使う方にせよ、視覚障害者の方にせよ、当たり前のように地域で暮らすためには、ちょっと困ったときに誰かが少し手を貸してくれる社会になる必要がありますが、車椅子を押すこと、視覚障害の方を手引きで誘導することに、恐怖や不安感を抱く方が多いことも強く感じています。なので、まずはその基本を身に付けるということが必要だと思います。

今回は、災害時に取り残されがちな要配慮者の視点、ということで取り入れた取り組みですが、結局は普段から誰もが暮らしやすい街であれば、災害時も取り残される人がいなくなるのではないでしょうか。

講座では、中学生も大人も、講師である私が何も言わなくても、防災講座では珍しいこういった取り組みを通して、たくさんのことに気づきを得ていました。






さて、この時間帯に同時進行で、昼食炊き出しボランティアが、西東京市の備蓄倉庫に置かれている「アルファ米」(お湯を入れるだけで食べられるご飯)と豚汁の炊き出しをしてくれていました。

当初はアルファ米のみの予定でしたが、PTAのお母さま方が栄養バランスへの心配から、急遽善意で豚汁を作ってくださいました。

ごちそうさまをする前のミニ講座でも少し話しましたが、避難所の食事は炭水化物に偏りがちです。また、塩分や脂分の多い食事になる傾向にあります。やはり、ドタバタする災害時に何とかしようと思ってもできないのが実態ですから、平常時からどういったことができるかを考えておくことが重要だと感じます。






さて、午後は机を囲んで、グループワークです。

まず、西東京市をはじめ、あちこちの自治体では消火器を道端に設置していますが、消火器の限界は火が天井に達するまでです。そして、ある実験では、その時間が約2分30秒だということがわかっています。

ですから、街頭消火器という防災対策について、私は少し疑問を感じています。もし、そこに維持費がかかるのであれば、消火器の本数を減らすなりして、住民でも訓練さえすれば使うことのできる「D級可搬消防ポンプ」や「スタンドパイプ」といったものを、街中に設置しておくことの方が現実的だと思います。そんな投げかけをしました。






次に、要配慮者とはどんな方々なのかを参加者全員で出し合ったあと、各グループで2つ(2人)の要配慮者を選んでいただき、その方々が災害時に困ること、そして、どんなサポートや配慮が必要なのかを話し合ってもらいました。

実は、この講座で一番大事な取り組みはこの部分です。

午前中の車椅子体験やアイマスク体験からはじまり、講座の途中では食事ですら栄養バランスの欠けたものになるほど、災害時にできることは限られていることを知ったり、要配慮者を中心に、孤立し、支援の網目からこぼれ落ちていくことを学んでもらいました。

そして、そういった積み重ねがあった上で、①プライベートスペース、②コミュニケーション、③移動、④排泄、⑤食事・栄養、⑥物資、⑦医療的ケアのテーマ別に、それぞれの要配慮者が困ることや必要なサポート・支援について考えるわけです。

今回は各グループ2事例のみでしたが、平常時にどういった視点で考えるかという思考回路を育むことが、誰も災害時に地域から取り残さないために必要な根本にあることだと感じています。

まずはこの思考回路を育み、そこから色々と考えを巡らせることで、平常時の備えに繋がります。

最後に、14時46分に東日本大震災でお亡くなりになられた方々への黙とうを捧げ、この講座を修了しました。

***

参加された中学生の感想を紹介したいと思います。

「東日本大震災の時は小学校2年生で、大人に連れられて中学校へ避難してきたけれど、次は自分の番だと思った。」

「今日のことは家族や友達にどんどん伝えなきゃと思った。」

「取り残されがちな要配慮者については、日頃から考えておかなければいけないと思った。」

今回の講座は、地域課題の解決に取り組む公民館から声をかけていただき、そこから中学校と共催という形になり、さらに、要配慮者の視点を取り入れるということで、地域包括支援センターやこの地域の民生児童委員や主任児童委員が参加しました。

また、西東京市には各公立小中学校に避難所運営協議会が設置されていますが、この組織に関わる地域住民も3校から参加しました。

公民館講座で、お隣さん・お向かいさんの繋がりを直接作ることはできませんが、今回の講座のように、地域のキーマンとなる方々が一挙に集まり、共通体験をしたり、一緒に学んでいくことで、その地域での防災活動や福祉活動、教育活動へと繋がっていくと思います。

この講座は、西東京市のネット情報サイト「ひばりタイムス」さんにも紹介されています。是非、併せてご覧いただければ幸いです。
http://www.skylarktimes.com/?p=14237

30年度も、この地域で継続的な地域防災講座を企画していくことになっているので、今後の発展が楽しみであるのと同時に、このような取り組みを支援させていただいていることに幸せを感じます。

ジョージ防災研究所
防災アドバイザー 小野修平


2018年4月3日火曜日

【報告】川口・鳩ケ谷住宅公園での防災イベント



先日、これまでの御依頼とは少し雰囲気の違ったイベントに呼ばれましたので、その模様をお知らせしたいと思います!!


3月10日(土)、どのようなイベントかと言うと、埼玉県にある「川口・鳩ケ谷住宅公園」において行われた防災イベントです。






埼玉県南最大級規模の住宅展示場ということで、多くの住宅メーカーのモデルハウスが軒を連ねていました。住宅展示場に足を踏み入れたことが無かったので、空いている時間はモデルハウスも覗かせていただきました。


ここで、「嬉しいプレゼントがもらえる♪防災ゲームで学ぶ親子防災対策」というイベントを開催するということで、防災を学ぶゲームを使い、住宅展示場に来場された方々に防災のことを学んでいただきました。






今回使用したゲームは、「シャッフル」というゲームですが、これを本来の遊び方のとおりにやってしまうと、時間が掛かりすぎてしまうことから、独自のスタイルで使用させていただきました。



未就学児には少し難しい部分もありましたが、持参した防災科学実験装置や様々な写真を用いながら、どの親子も熱心に学んでいた様子が印象的でした。






お出かけには申し分のない気候だったため、どのメーカーさんも事前アポイントが少ない日だったようですが、防災の意識向上や学習はもちろんのこと、そういったことで住宅展示場へお客さんを呼び込むことがイベントの主目的であることから、それなりの人数が寄ってくださったことは有難いことです。






ふらっと立ち寄って、防災のことを学んでもらうスタイルのイベントでの経験は2度目だったので、いつもと違うスタイルで少し緊張していましたが、地道にこういった活動をしていくことの重要性も感じることができました。


また機会があれば、こういった形式の取り組みもやってみたいですね。


防災アドバイザー 小野修平



2018年3月31日土曜日

学校安全の必修化について


本日は、学校安全の必修化について、書きたいと思います。
なお、詳しいことは後日、きちんとした記事にする予定ですので、今日は思ったことを書くだけにします。


これまで、学校の先生になるための教員養成課程において、防災を含む「学校安全」という分野についての授業は必修ではありませんでした。
東日本大震災のあと、防災教育や安全教育は、まさしく「生きる力」を育むものだとされ、全ての教科等にも関連するものであることから、一時は学校現場における教科化も含めた検討までされました。
結果的に、この度改訂された新学習指導要領には、教科等で横断的に安全教育を行うことが記載され、ますます安全教育に力を入れていくことが盛り込まれました。


そして、先生の卵を育てる教員養成課程においても、「教育職員免許法施行規則」が改正されたため、2019年度から学校安全に関する授業が必修化されることになりました。


私自身、教育学部を卒業していますが、学校保健安全法に定められている学校安全計画や危険等発生時対処要領の条文を覚えたくらいで、授業で学校安全のことを深く学んだことはありません。


自分の身も含め、子供の安全を守らなければならない教員にとって、交通安全や防犯なども含めた学校安全の学びは必須ですので、今回の必修化には大変期待をしているところです。


そもそも現状の避難訓練などは、逆に子供の命を危険に晒すリスクも多くあるのにも関わらず、その改善が図られないことに危機感を感じています。


東日本大震災は学校管理下で起こった災害ですが、直下型ではなかったため、地震の揺れ自体での被害はそれほど大きくなかったのですが、これまで直下型の地震が学校管理下で起きてなかったことが幸いなことであって、学校管理下でまずは正しく身を守ることができる指導をしていかなければなりません。「想定外」という言葉で片付けられては困ります。


ですから、その一歩として、まずは全ての教員養成の場において、学校安全に触れられることは、とても評価したいと思います。


一方で、単に法律の条文を確認したり、今まで当たり前のように行われてきた避難訓練や防災訓練などの取り組みをあたかも正しいことのように伝えるだけの授業なのであれば、無意味ですし、結局は学生自身がそのまま現場に出ても困るだけです。


近隣だけでも多くの教員養成課程を持つ大学があるため、自分なりにアプローチを掛けてみようとは思いますが、今回の必修化が正しい方向へと導いていかれることを願っております。

ジョージ防災研究所 代表
防災アドバイザー 小野修平




2018年3月27日火曜日

【報告】西東京市社会福祉協議会主催防災講演会「東日本大震災を忘れない」



去る3月2日(金)、西東京市社会福祉協議会主催で行われた防災講演会の模様をお知らせいたします!


この講演会は、東日本大震災の原発事故により、西東京市に避難されている方々への支援事業の一環として行われたもので、『東日本大震災を忘れないー西東京市で起こる災害とは?ー』というテーマでお話をさせていただきました。


当日は、平日の昼間にも関わらず、東日本大震災の発生から7年を経過するということで、50名の定員を超すほどの来場者があり、和気あいあいとした雰囲気の中、熱心にお話を聞いていただきました。






概ね1時間ちょっとのお話でしたが、前半は被災された方々が最も困ることである「トイレ」について、家庭での備えの方法を伝授しました。


今までのブログでも度々触れているとおり、せっかく助かった命が、過酷な避難生活の影響で亡くなってしまう「震災関連死」が災害の度に問題となっておりますが、その根本にあるものは「トイレの環境」だと私は考えています。


トイレが汚い、臭い、長蛇の列という状況下では、トイレに行きたくなくなりますし、和式タイプの便器や段差があれば、そういったトイレを使うことができない方々もたくさんいます。


すると、多くの方が共通して取る行動は、食事や水分摂取を控えるというものです。そして、食事や水分摂取を控えるため、身体を動かすことも控えるようになり、免疫力が下がっている中、感染症の蔓延や過度なストレスも加わり、人間は簡単に病気になり、場合によっては亡くなってしまうのです。


私はこの一連の問題を、「トイレから始まる負の連鎖」と呼んでいます。


しかし、残念ながら、「災害用トイレ」というものは価格が高いため、必要な数を備えておこうと思うと、なかなか一度には難しい方が多いのではないでしょうか?


そこで、低コストで、かつ、その備えにより、ほかの用途にも使えるような方法をお話させていただきました。






後半では、西東京市で大地震が起きた場合に起こり得ることをお話しました。東日本大震災は「津波災害」+「原発事故災害」でしたが、西東京市で起こり得ることを知っておくことはとても大事なことです。


また、特に配慮が必要な方々とされながら、災害の度に取り残されがちな「要配慮者」(高齢者や障害者、妊産婦や乳幼児、外国人など)も含め、みんなで助け合い、誰も取り残されない街にするために必要なことについてもお話しました。


先日、講演会を担当された職員さんとお会いしましたが、大変好評だったと仰っていただきました。これからも引き続き、少しずつですが、こういった話をあちこちで展開していけるように、頑張りたいと思います。






また、講演後は「ボンボンロール」という方々による「詐欺防止ソング」の披露や、マリンバとピアノの演奏もありました。


音楽を聴く機会と、防災・防犯の抱き合わせ企画は、とてもナイス♪な発想だと感じます。私も会場で一緒に楽しませていただきました。

ジョージ防災研究所
代表 小野修平

2018年3月6日火曜日

【講座報告】公民館&児童館共催「もしものときのサバイバルクッキング」



平成30年2月21日(水)、西東京市にある「柳沢公民館」と「保谷柳沢児童館」が共催という形で、子ども対象防災講座『もしものときのサバイバルクッキング』を行いました。


「公民館」×「児童館」という、これまた稀な組み合わせも注目です。
当日は12名の小学生が参加してくれました。


当日、急遽参加した小学生は、もちろんエプロンは持っていない…。
そこで、「45Lのごみ袋」「スズランテープ」「養生テープ」「はさみ」で簡易エプロンを作ってしまう児童館の館長はさすがでした!!






さて、今回のメインは、「ポリ袋調理法」を活用した「カレーライスづくり」
ポリ袋それぞれに、ごはんとカレーの具材を入れ、30分ちょっと沸騰したお湯で煮込むことで、カレーライスが完成です♪






このポリ袋調理法は、エコで時短術の調理法と言われており、最悪の状況下ではポリ袋の中に入れる水だけキレイなものを用意できれば大丈夫です。また、蒸発して外に逃げ出すことがないので、少量の水で調理することができます。
飲料水が貴重な災害時の調理法として、有効な方法の一つです。


もちろん、そういった調理法を楽しく体験させるだけでもいいのですが、せっかくの防災講座ですから、2人1組を組ませ、役割分担をしながら協力して、カレーライスを作り、それを2人で分けて食べる、という設定で行いました。






少々言葉のきつい小学生もいましたが、私も教育学部卒業の血が騒ぎつつ、ところどころで指導を入れながら、少しずつ助け合いながらカレーライスづくりに取り組む子供たち。


煮込んでいる30分ちょっとを潰すため、若干小学生には難しいレベルの新聞紙食器も作ってもらいました。
配慮が必要な子供やどうしてもわからない子供には手を差し伸べますが、「何のために、今日は2人1組なの?隣に聞いてみなさい」という言葉を掛けながら、新聞紙食器も全員が完成させることができました。






また、目玉企画として、じゃがりこのポテトサラダもやってみました。
カップラーメンのように、ふたを半分ほど開け、3分の1ほどお湯を入れて2~3分待ち、あとはフォークかスプーンで潰すだけ。


ポリ袋調理もそうでしたが、案の定、じゃがりこのポテサラの説明をすると、「えーーーっ!」という反応。


今回は5種類のじゃがりこを用意し、一口ずつ食べてもらい、1位には3点、2位には2点、3位には1点で投票してもらった結果…






1位:梅ちりめん味(22点)
2位:あらびきWペッパー味(20点)
3位:チーズ(11点)
4位:サラダ・じゃがバター(10点)

という結果に!!!期間限定の味はとても人気でした!!!


最後に、子供たちの感想をいくつかご紹介します♪

「はじめは、ビニールぶくろでごはんやカレーは作れないと思いました。」
「さいしょは、つくれないでしょと思っていたけど、できてびっくりしました。そして、おいしかったので、またそのやりかたで作ってみたいです。」

「よくじゃがりこでつくれるなと思った。」
「あんなやりかたおもいうかばなかったし、ふつうに食べるとおいしくないのがおいしかったから、家でもやりたいです。」

「わからないこともあったけど、友だちにおしえてもらってできたのでよかったです。」
「とてもむずかしくて、皿がたたなかったけど、友だちにてつだってもらってできたのでうれしかったです。」
「はじめはむずかしかったけど、友だちが作っているところを見てできた。」


講座参加者の募集や予算、会場や備品、人的支援など、公民館単体、児童館単体では難しいところを、今回は共催という形でやったので、すんなりと様々な課題を乗り越えることができたように感じます。


その上で、子供たちが助け合い、協力し合いながらカレーライスや新聞紙食器を作り、その食器に盛り付けて、一口目を食べたとき、「うまーーーーーい!」とキラキラした笑顔を見せてくれた時、とても感動しました!!


ジョージ防災研究所 代表
防災アドバイザー 小野修平


2018年2月21日水曜日

【マンション防災】フォレストレイクひばりが丘での講演とワークショップ(報告)



広大な敷地の中に、たくさんの木々や池などの自然が溢れ、全14棟、381戸で構成されている「フォレストレイクひばりが丘」。西東京市内で、先駆的な防災活動を展開しているマンションです。

一昨年から本格的にマニュアル作成をはじめ、昨年には管理組合(理事会)と自治会とが合同で「防災委員会」を立ち上げました。

私も、マニュアル作成のコンサルティング業務を引き受けさせていただき、助言をしてまいりましたが、核となるメンバーの皆さんの熱心さに圧倒されたのを今でも覚えています。

そして、昨年11月には、マンション全体の防災訓練に合わせて、災害時における最大の困りごと「トイレ」に関する講演をさせていただきました。

この度、再度御依頼をいただきまして、2月17日(土)に住民向けの防災講演会と、防災委員会向けのワークショップを行いましたので、その様子をお知らせいたします。


***


前半の講演では、過去の災害において、マンションがどんな被害を受けたのかについて、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震を比較しながらお話しました。






特に、トイレの排水問題と水の給水問題については、住民の皆さんが前のめりになりながら聴いてくださった様子が印象的でした。


***


引き続いて、後半には私が開発中の『集合住宅災害対策本部運営ゲーム』の試作版を体験していただきました。






全部で40枚のカードそれぞれに、マンションで災害時によく起こり得る出来事を記載してあります。一定時間おきに次のカードをめくり、一つ一つの出来事に対応していくゲームです。

安否確認シートを傍らに置きながら実施するのですが、安否確認シートには「初級編用」、「中級編用」、「上級編用」の3種類があり、それぞれ把握できている住民の情報が異なります。

ですので、子供が二人だけで家にいる時に災害に遭ったある家族は、上級編になると、父親が消防官、母親が市役所職員という設定が出てくるので、しばらく帰ってくる見込みがないことが発覚するのです。

このように、何度も何度も、レベルアップさせながら実施していくことで、さらに深みを増すことができるような仕組みを取り入れてみました。

マンションで起こる主な出来事をほぼ網羅させているため、ゲームをしながら話し合っていくことで、自然とマニュアルの基盤となるような話し合いもできるため、マニュアルができていないマンションでも、マニュアルはできたけれども、それが実践に繋がるのかを検証したいマンションでも使うことができます。






試作版初デビューだったため、うまくいくか不安だったのですが、「これ売るの?売るんだったら買う!」なんていうお声もいただき、十分実践で使えるツールとして完成できていることを実感させてもらいました。

今回は2グループに分かれ、5~6人ずつ体験してもらいましたが、自然と安否確認をまとめる人、火災や建物被害に対応する人、マンション中に排水をしないように呼び掛ける人などの役割分担をしていました。

また、終了後もこちらの進行をする前から、色々と分析を始めており、このツールは意識が上がるとともに、実践にも十分繋げていけると確信しております。









さらに、終了後に中級編用、上級編用の安否確認シートも見ていただきましたが、「このゲームを棟ごとに全住民が実施することで、普段は個人情報の開示に否定的な方も、必要性を理解してくれるのではないか」という発言もありました。

地道に広報をしていてもなかなか伝わらなかったり、訓練をしても参加者が少なかったり、名簿を作成しようとしても個人情報の開示を拒否されてしまったりと、既存の方法ではどの取り組みも大きな前進には程遠いというのが、マンションで防災を担う方々の大きな悩みだと感じています。

しかし、このゲームを体験することで、自然と広報するキッカケにもなるし、一種の訓練になるし、次は訓練を通してやってみたくもなるし、必要最低限の個人情報収集に前向きになるし、一石二鳥どころか、一石三鳥、一石四鳥の効果を発揮すると思いました。


***


フォレストレイクひばりが丘さんは市内でもかなり進んだ取り組みを実践されており、このまま軌道に乗っていけば、災害時の実働はほぼ問題なくできると確信しています。

私はこのマンションが「防災モデルマンション」になるべき力を持っていると思います。そうなるよう、これからも支援していくとともに、全国のマンションにおける防災がさらに推進されるよう、開発中のツールを本格的に展開していきます。

ジョージ防災研究所 代表
防災アドバイザー 小野 修平

2018年2月19日月曜日

【取組報告】西東京市立柳沢中学校の防災教育②(HUG体験)



西東京市立柳沢中学校では、生徒への防災教育を熱心に行っております。
第1学年が1月31日の防災講話を踏まえて実施した、避難所運営を体験するゲーム「HUG」を見学・支援させていただきましたので、御報告いたします。

(★防災講話の模様は、こちら からご覧ください!!)

HUG(ハグ・避難所運営ゲーム)とは静岡県で開発されたゲームで、一人一人の避難者が1枚ずつのカードになっており、そのカードにはそれぞれの困りごとなどの情報が書かれています。それが次々へと読み上げられる(=避難してくる)ので、プレイヤーはそれを学校の図面上でどこに入ってもらうかを考えつつ、困りごとに対して対応をしていくゲームです。

このHUG体験を行うにあたり、昨年は私がグルグルと15班を回って、必要なタイミングで必要な問いかけを行いましたが、その存在を各班に固定で付けた方がいいということで、今回は「アドバイザリースタッフ」の導入をしていただけました。

直前に実施している防災講話の後に、集まれるメンバーでHUGを体験するとともに、必要な視点(=教えるのではなく、問いかける)を共有しました。






いよいよ、HUG本番の開始です。
今回のメイン講師である「田無スマイル大学」の富沢このみさんから説明とゲームの想定を提示された後、1組目の家族のカードが読まれました。






45分の間で、たくさんのカードが配られる中、8つの出来事も交えつつ、どの生徒も一生懸命取り組みました。






その後、各班ごとに振り返りシートを用いつつ、ゲームの振り返りをし、選ばれた6班が振り返りシートの発表を行いました。

***

今回、2年目の取り組みとして、防災講話とHUGの支援をさせていただきましたが、避難してくる方々が抱える状況や課題に対して、とてもマイナスイメージの発言が多かった印象を受けました。

大人は機械的にカードを配置して終わり、という場合があるんですが、中学生は一人一人の避難者に丁寧な対応をしようと努力します。

しかし、昨年は「うつ病」を「うつる病」と捉えていた生徒もいたり、車椅子をステージ上に上げてしまったりといった行動が見られました。

そこで、様々な機会での教育や今回のアドバイザリースタッフの導入に繋がったわけですが、今回は「やばい人がきた!」という発言が目立っていたように感じます。

去年以上に、災害時に孤立しがちな方々の話に力を入れたつもりでしたが、その成果からか丁寧な対応が見られた一方、「かわいそうな人」「大変な人」「助けてあげなければならない人」という捉え方が多かったように思います。

実は、出来事の一つに「赤ちゃんが泣いて困っている人がいます」というものを急遽足してもらっていたのですが、外にテントを立てたりなど、どこかに追いやり、孤立させる対応が多かったように思います。

中にはキッズスペースを作るといった対応のように、同じ悩みを抱える方々を集め、安心できる居場所づくりを考えた班もありましたが、多くの班が「赤ちゃんの泣き声=迷惑」と捉えているかもしれない気がしました。

赤ちゃんは泣くものですし、それを迷惑だからテントに…なんて対応をしてしまえば、孤立させてしまいます。

よく、災害時で大変なんだから、とりあえず受け入れるだけ受け入れて、あとで一人一人に対応していけばいい、なんていう話が聞かれますが、それでは赤ちゃんを抱えている家族は、2時間もすれば迷惑を掛けると言って、避難所から出て行きます。そして、地域から孤立していきます。

対応に正解はないですが、ベストはあるはずです。

この経験を生かして、来年度の防災講話は具体的なエピソードを用いながら落とし込んでいかないといけないのかな、と思いました。


ですが、全体的には中学生一人一人が主体的に学び、考え、とても充実した学習になったと感じます。

引き続きお手伝いさせていただくわけですが、今後も柳沢中学校の取り組みを見守っていきたいと思います。

ジョージ防災研究所 防災アドバイザー 小野修平

【講演報告】西東京市立柳沢中学校の防災教育①(防災講話)



本日は継続的に関わらせていただいております、西東京市立柳沢中学校における取り組みについて御報告いたします。

柳沢中学校は、生徒への防災教育を先進的に取り組んでいる学校です。

1年生の段階では、私の防災講話と避難所運営を体験するゲーム「HUG(避難所運営ゲーム)」の体験を行います。

2年生になると、生徒自身が避難者になりつつ、避難所運営協議会(※1)が避難者を受け入れる避難所開設訓練を実施します。

これをベースにしながら、障害の理解を進める教育のため、視覚障害者をお呼びしたり、近隣の福祉施設の協力の下で車椅子体験をしたり、地域包括支援センターによる認知症サポーター養成講座を実施したりしています。






ということで、今年も1月31日(水)の午後、第1学年の生徒に対して、防災講話を実施しました。

まず、地震が発生したその瞬間、どのように身を守ったら良いのかを話しました。

学校の避難訓練だけでは、学校の外に出た瞬間に命を守ることができません。
写真と映像を交えつつ、生徒にも問いかけをしながら説明しました。

続いて、過去の災害を見てみると、元気な人や困りごとを訴えられる人が多くの支援を受けていき、いわゆる「要配慮者」と呼ばれる配慮やサポートを必要とする方々が取り残されている話をしました。






講話の後半戦では、「中学生は助けられる存在ではなく、助ける存在である」というメッセージを伝え、中学生であれば困っている人のために助ける側になれる力があることを話しました。

たった50分の時間でしたが、今年もとても熱心に学ぶ姿勢を見られて嬉しかったです。

この防災講話を踏み台にして、2月5日(月)にHUG体験を実施しました。
その模様は、こちら からご覧ください!!


(※1)
避難所運営協議会とは、西東京市内の各公立小中学校に設置され、行政職員・学校教職員・地域住民等で構成されている。
平常時はマニュアルの作成や避難所開設訓練の実施などを行い、災害時には避難所の開設と避難所運営委員会への引継ぎを担う。

ジョージ防災研究所 防災アドバイザー 小野 修平

2018年1月13日土曜日

【講座報告】災害ボランティア養成講習会(東京都西東京市)



講座報告です。
本日は、西東京市社会福祉協議会の西東京ボランティア・市民活動センター主催「災害ボランティア養成講習会」において、講師を務めました。


昨年度までは5回コースだったものを、今年から「災害ボランティアセンタースタッフ養成講習会(4回)」と「災害ボランティア養成講習会(1回)」に分けたものですが、なんと24名の御参加がありました。しかも、下は6名の高校生から、上は70代の方まで幅広い年代からの参加でした。




そもそも、このような講座に参加する方々なので、「平常時でも、災害時でも、自分ができることがあれば何かしたい!」という方が多いでしょから、私からは、


”みんなで災害を乗り越えよう、とは言いながらも、実際にはお年寄りや障害をお持ちの方、妊婦さんや赤ちゃん、日本語のわからない外国人など、いわゆる「要配慮者」と呼ばれる方々が様々な支援の網目からこぼれ落ちてゆき、元気な方やSOSの声を上げられる方に支援が偏る”


という現実をお伝えしました。その上で、


”平常時も災害時も、何らかの形で災害ボランティアに関わる際、上がってくるニーズだけでなく、ニーズを上げられずにいる方々のことにも目を向けてほしい”


というお話もさせていただきました。その一環として、「要配慮者にはどんな方がいますか?」ということと、「その要配慮者がどんなことで困りますか?」ということを考えるグループワークをしました。




進行の都合上、後半のグループワークは若干消化不良になってしまいまして、次回は内容を大幅に改善することになりそうですが、配慮を必要とする方々をピックアップするグループワークでは幅広い視点から意見が出ておりました。




西東京市では普段からも、避難所となる公立小中学校に設置されている避難所運営協議会にて取り組みがされていたり、市内唯一の災害ボランティアグループ「西東京レスキューバード」による取り組みなど、災害に備えて様々な活動が展開されております。


しかし、その取り組みも人手不足で、西東京市で災害が起きた時に、誰も取り残されることなく災害を乗り越えるためには、まだまだ人手も足りませんし、多くの市民への啓発活動も必要です。


引き続き、災害に対して活躍できる人材を一人でも多く育てていけるよう、頑張っていきたいと思います!!

ジョージ防災研究所代表 防災アドバイザー 小野修平